窓の役割といえば、「室内に光を取り入れる」「換気をする」など、住まいに欠かせない建材の一つです。そして窓は、家づくりやリフォーム時に開口部の建具を意味して『サッシ』とも呼ばれています。
サッシは、窓、窓枠や出入り口の枠、玄関戸、勝手口などの戸も含めて言います。
今回は、サッシ(窓)の性能値と種類について解説します。※長文の記事です。
・サッシ、窓の歴史
・なぜ高性能な窓が必要なの??
・窓の性能値について
・枠の性能、Uf値について
・ガラスの性能、Ug値について
・気密と耐風性能について
・窓の性能比較のまとめ
・世界トップランナーの窓と日本で販売中の窓のUw値を比較
サッシ、窓の歴史について
高性能な窓について解説する前、窓の歴史と時代背景についてご紹介します。
引用元:YKKAP株式会社『窓史記』より
https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/life/madoshiki/
【古代~近世:木製の枠と紙の時代】
日本建築物の最古の窓は、昭和57年に発掘された飛鳥時代の連子窓です。
古代の窓や戸は、開口部に棒状の木や竹を縦又は横に並べた木製の窓でした。
平安時代になると、屋内と屋外を仕切る、引違いの障子や襖がある書院造の建物が建築されました。しかし、この時代の紙は高価だったことから、障子や襖がある家は限られていました。
江戸時代中期ごろから、紙作りが盛んになり一般的な家庭にも障子が少しずつ広まっていきました。
この頃には、長崎の出島での貿易によって輸入されたガラス窓がありましたが、高価だったため江戸時代でガラス窓が使用されてた家は、ごく一部の住居に限られていました。
【近代:ガラス工業発展の時代】
江戸から明治時代に変わり、紙の生産量が増えた事で、町や農家の家庭にも障子付きの家屋が普及しました。また、文明開化によって西洋の制度や習慣が日本に入ってきたことで大きな暮らしの変化と、産業革命による工業製品の生産力が飛躍的に増大し、安定したガラスの生産が可能になり、ガラス窓が設けられた迎賓館や公共施設の建築物が建造されました。
大正時代後期になると、一般家庭の家屋にも木製枠のガラス窓が普及しました。
【現代(戦後):金属枠の時代】
昭和30年代、これまで木製枠のガラス窓が主流でしたが、スチールサッシの登場により、サッシの標準サイズが規格化され、コストを抑え物流量増やす窓の国内製造の工業化が進んだ時代です。
そして、戦後からの高度経済成長にかけておこった慢性的な住宅不足により公団住宅の建設ラッシュとアルミの加工技術が発展し、スチール枠からアルミ枠の単板ガラス窓が普及し、昭和40年代には新築住宅のアルミサッシの普及率は約90%でした。ドイツで、樹脂窓の製造が始まったのもこの時代でした。
【現代:高性能なサッシの時代】
1955年(昭和30年)以降世界の厳寒な地域(世界地図参照濃い青の地域:cold temperate)を中心に普及した樹脂サッシが、日本での国内生産が始まったのは1976年(昭和51年)に北海道などの寒冷地向け用の窓でした。国内での断熱性能、省エネ性能を見直す法改正が繰り返され、2010年の樹脂窓普及率7%から2020年には22%に増え、日本でも樹脂サッシ、高性能な窓がスタンダードになり始めたのです。
なぜ高性能な窓が必要なの??
冒頭で説明させて頂いたサッシが設置される開口部に…ペアガラスのアルミサッシ(窓性能値:U値4.65W/㎡k程度)を延床面積120.08㎡の2階建の断熱性能Ua値0.87W/㎡k(H28省エネ基準レベル/断熱等級4)家で検証した場合。
夏は窓から74%の暑い熱が室内に侵入し、冬は窓から50%の暖めた熱が屋外へ逃げていき、窓などの開口部から一年を通して多くのエネルギーをロスしていることがわかっています。
これから省エネ時代のエコハウスには、サッシからのエネルギーロスを減らせる高性能な窓が必要になのです。
窓の性能値について
サッシ(窓)の断熱性能を比較する際にみて頂きたい値は、熱貫流率U(Uw) 値です。
窓の熱貫流率は、同じ窓シリーズであっても、窓のバリエーションタイプやサイズによってUw 値が変わります。
サッシ(窓)性能の性能値【Uw 値 】は、枠の性能値【Uf 値 】とガラスの性能値【Ug 値】の値と窓のサイズから計算され窓の熱貫流率のU値が表示されています。
枠の性能、Uf値について
枠は、窓の周囲にあるフレームの部分を言います。
枠の性能Uf値は、枠の素材の熱抵抗値と枠内の断面構成部材の熱伝導率と構成部材の厚みで数値化されます。
まず枠の素材の熱伝導率によって熱の伝わり方は変わります。現在日本で販売されている主な枠の素材は、『アルミ』『樹脂』『木材』この3つです。
各枠素材の熱伝導率は、アルミ200W/m・k 、樹脂0.17W/m・k 、木材0.12W/m・k です。
アルミは、熱伝導率が高く、熱が高温から低温へ運ばれる熱移動時に熱が伝わりやすい特徴を活かして、お鍋やバットなどの料理器具にも使われています。
樹脂と木材は、アルミに比べ熱移動時に熱が伝わりにくい為、断熱性能を高めたい住宅建材にも使用されています。
次に、高性能なアルミや樹脂枠の内部断面構成で中空層の『チャンバー』とスペースがあります。
チャンバーは、いくつもの中空層があることで枠の断熱性能を高めることが出来ます。
そして、枠の断熱強化でチャンバーの中に断熱材が入った窓枠もあります。
今回のサッシ断面画像はYKKAP株式会社さんのAPW330、APW430とAPW430+の画像をお借りしました
サッシ枠内に断熱材が入ることで、枠のUf値が下がり、トリプルガラスのUg値とのU値バランスが良くするためです。
熱伝導率が高く性能が低いと言われていたアルミサッシも断熱材が枠に入ることで、アルミサッシのUf値が劇的に変わり、高性能アルミサッシになります。
パッシブハウスのデータベース参照『EUROPA社』の断熱材入高性能アルミサッシのスペック
↓
Uf値0.57W/(m2 K)
Ug値0.7W/(m2 K)
Uw値0.68W/(m2 K)
ガラスの性能、Ug値について
ガラス性能のUg値は、ガラス枚数と複層ガラスの中空層の種類とスペンサーの熱貫流率で計算されます。
各メーカーカタログ記載のガラスの厚み、断面構成部材によって値がことなります。カタログなど値をご確認いただけます。簡単な目安で下記の表を作成しました。
気密と耐風性能について
サッシには様々なバリエーションがあります。サッシのタイプによっては気密性能が下がる窓もあります。例えば下部4タイプのサッシの中で…
・気密性に優れた窓は?
・気密性が低い窓は?
・耐風性に優れた窓は?
を一つお答えください。
正解は
・気密性に優れた窓は、③ドレーキップ窓
・気密性が低い窓は、②ジャロジー窓
・耐風性に優れた窓は、④シャッター付窓
良く見かける①の引違い窓は、2枚の障子の重なる箇所にすき間が出来てしまいます。
気密性能を上げることで、換気効率の向上、内部結露のリスク軽減、省エネにもつながるので窓選びの際にお役立てください。
窓の性能比較のまとめ
サッシ性能の性能値【Uw値】は、枠の性能値【Uf 値】とガラスの性能値【Ug 値】の値と窓のサイズから算出されるます。
枠の性能値【Uf 値W/m2 K】の要素
・枠の素材
・枠と障子枠の断面構成(チャンバーと言われる層がいくつあるか)
ガラスの性能値【Ug 値W/m2 K】の要素
・チャンバー内の断熱材の有無
・ガラスの枚数
・複層ガラスの断面構成
換気効率の向上・気密性能【C値】の要素
・窓の使い勝手、パリエーションタイプ選び
最後に…
世界トップランナーの窓と日本で販売中の窓のUw値を比較
窓選びの目安になるように、現在輸入品を含めて日本で販売している窓と世界トップランナーのパッシブハウスのコンポーネントデータベースを参照にして表を作成してみました。
2021年12月時点のデータです。また新商品や、新たに認定を受けたデータがあると変わります。
来年2022年1月29日30日は弊社モデルハウスにて窓の勉強会を開催します。
年明けにイベント情報をご案内させていただきます。